近い将来必ず発生すると予測されている東海,南海,東南海地震、あるいはこれらが連動した巨大地震などにおいて、生きるために欠かせないライフラインの一つである『水』の確保は大変重要です。
ところが、いざ地震が発生するとライフラインは遮断され、避難所や給水所では被災者が水を受け取るために行列をなしています。また、透析病院での操業不能の主因は水の供給遮断であったと言われています。そのような状況下で、個々の医療機関から行政へ給水車による水の供給を要請しても届かないという事態も発生しました。貯水タンクは、平時に飲料水及び生活用水を供給する役目だけでなく、災害等の非常時に水をストックする役目を担っています。厚生労働省は災害などでの断水発生時における診療用の水3日分の備蓄を災害拠点病院、救急救命センターなどに求めており、貯水タンクは非常時のライフライン確保の手段として期待されています。しかし、これまでの大地震では貯水タンクに生じるバルジングやスロッシング現象によって、貯水タンクが破損し、被災地域の医療や生活に多大な影響を及ぼしています。
このようなことから、災害時の貯水タンクの活用について広く周知する必要があると考えます。災害が発生する前に、貯水タンクを活用できるよう準備をしておくこと。避難所や病院などの給水拠点施設と自治体とのネットワークをつくり、いざというとき素早く稼動できる体制を作っておくこと。地震時に貯水タンクが破損しないようにしておくこと。こういった活動が必要です。
我々は、これまで中央大学理工学研究所平野研究グループ(中央大学総合政策学部教授平野廣和主催)として、地震時における貯水タンクの被災について調査研究をしてきました。
しかしながら、研究グループの研究成果を役立たせ減災防災につなげるには貯水タンクの運用を含めたソフト面についても深く関わっていくことが重要となり、研究グループだけの活動では困難となっています。そこで、他団体との連携や、拠点施設と自治体とのネットワーク作り、情報発信といった活動のために、我々の活動に賛同してくれる誰もが参加できる団体である、特定非営利活動法人を設立することを決意いたしました。
特定非営利活動法人となった暁には定期的な総会の実施や、法令等で定められた書類の作成・提出、一般市民への情報公開などを適切に行うことで、社会的信用を得、健全な法人運営が実現できると考えます。我々は災害時における貯水タンクの活用に関わる事業を通じて、災害に強いまちづくりと地域の安全安心に寄与することを目指します。
2003年
十勝沖地震における円筒型オイルタンク火災事故を受けて長周期スロッシング勉強会開催。
2004年~2010年
1600KL実機円筒型オイルタンク等にてスロッシング制震効果実証実験を実施。浮き屋根式タンク制震装置開発。
2011年
東日本大震災 貯水タンク地震被害調査実施。
2012年~2018年
3m×3m×3m実機角型貯水タンク(FRPパネル型、SUSパネル型、鋼板製一体型)等にて振動実験を実施。制震装置開発。
2019年も振動実験を計画中。
2014年
横須賀市民病院の屋上貯水タンクに制震装置を試験設置。その後全国で140基程度納入。
2015年~2018年
土木学会地震工学委員会“水循環施設の合理的な災害軽減対策研究小委員会”において“WG4 給水タンク・配水タンクの地震軽減対策研究”に参加。
2016年~2017年
熊本地震調査における貯水タンク地震被害調査実施。
2018年
大阪府北部地震における貯水タンク地震被害調査実施。
2019年10月
特定非営利法人貯水タンク防災ネットワークの設立